転調に使えるピボットコードと呼ばれる概念について解説します。
ピボットコードは、あるキーとあるキーにある共通したダイアトニックコードのことです。例えばCキーとFキーでは7つのダイアトニックコードの内、3つ、ないし4つのピボットコードがあります。(四和音の場合、FキーのC7はCキーに存在しません。)
そのコードが仲介役のような形になって転調先のキーに橋渡しします。イメージとしては駅の乗り換えが分かりやすいかもしれません。例えば次のコード進行を見てください。
3小節目のFがピボットコードとなって、Fキーに転調しています。このように2つのキーにある共通のダイアトニックコードを使って転調するため、スムーズに転調することが出来ます。
セカンダリードミナントは一時的な転調ですが、ピボットコードは本格的な転調として使用されることが多いと思います。
仲介役のピボットコードはどちらのキー?
ピボットコードは実際にはどちらのキーと解釈すれば良いか疑問に思った方もいるかもしれませんが、どちらのキーとして取り扱っても大丈夫です。ピボットコードが鳴っている時間が長い場合、途中で変化させるアプローチも良いでしょう。
スケール的には、前記の例だとFリディアンスケール、若しくはFイオニアンスケール(Fメジャースケール)のどちらでも良いということになります。
ピボットコードの数
前記の例では親近調だったので、多くのピボットコードがありましたが、遠隔調では数が少なくなります。転調の自然さはピボットコードが多くあるキー程自然な転調になります。言い換えれば親近調ということですので、当然と言えば当然です。
組み合わせ方によっては、例えばCキーとEキーのようにピボットコードがない場合もあります。ただし、本来のピボットコードから解釈を広げて、サブドミナントマイナーなどにも適用すると、可能性は広がります。
拡大解釈
例えばCキーとEキーにあるAmの場合、CキーだとVIm、EキーだとIVm(サブドミナントマイナー)になります。このAmをピボットコードとして転調します。
D7はサブドミナントマイナーの代理で、AmからD7まではEマイナーキーということになります。Eキーの中で一時的に同主調から借用して、最後にEキーに戻るといった感じです。
こういった解釈も可能ではありますが、実質3つのキーが展開されることになり、転調感が強い感じになります。
コード機能の共有
これまでの例ではコードネームが同じといった条件だけで見てきましたが、コード機能も含めて考えるとよりスムーズな転調になります。例えば次のコード進行を見てください。
Emがピボットコードとなりますが、これはCキーでもGキーでもコード機能はトニックです。CキーではIIImのトニック、GキーではVImのトニック、ということです。
とてもスムーズではありますが、条件が増えるため組み合わせはより限られることになります。