セカンダリードミナントを理解して使えるようになると、ダイアトニックコードのみの時より単調さがなくなります。楽曲の要所要所で効果的に使えると、表現力が上がります。セカンダリードミナントとは何なのかを解説します。

セカンダリードミナントとは?

セカンダリードミナントは名称から想像出来るように、二次的なドミナントです。では何がどう二次的なのでしょうか?

一次的なドミナントは、スリーコードでも解説しましたCキーにおけるG7です。ドミナントはトニックへ進行したい性質が強く、トニックへ進行することをドミナントモーションと呼ぶことも解説しました。この性質を利用して、ダイアトニックコードの各コードをトニックと見做しドミナントモーションすることをセカンダリードミナントと呼びます。

例えばDmに進行するドミナントコードはA7になります。A7はCキーのダイアトニックコードにはありません。このようなダイアトニックコード以外のコードはノンダイアトニックコードと言います。

これの意味することは、要するにA7 – Dmの進行はCキーではないということです。Dmをトニックと見做してドミナントモーションしているため、つまりこの部分はDハーモニック(Or メロディック)マイナーキーとなります。
(メジャーキーのドレミファソラシドをラシドレミファソラにそのまま並び変えたナチュラルマイナーのダイアトニックコードにはドミナントになるV7がありません。ナチュラルマイナーの場合はVm7になります。)

セカンダリードミナントの例

上記のようなコード進行の場合、Cキーの中で一時的にDハーモニックマイナーキーが登場することになります。つまりこの部分だけ転調をしています。このような転調は一時転調や部分転調と言います。

また、このように一時的に他のキーのコードを用いるため、和名で借用和音と呼びます。DハーモニックマイナーキーのV7を借用しているのです。

解決後のDmは何のキー?

上記の譜面ではDmのコードはCキーとDハーモニックマイナーキーが被ってます。どちらのキーでも解釈が可能です。このDmというコードはCキーにもDハーモニックマイナーキーにも存在するためです。ここでは深く解説しませんが、このようなコードをピボットコードと言います。

ただセカンダリードミナントは解決先のダイアトニックコードを「仮に」トニックと見立てて一時的に転調するといったものなので、解決したらCキーに戻る、つまり変化したC#などの音はDmのコードでは使用しないことが多いと思います。Dmが鳴っている時間が長い場合、前半ではまだDハーモニックマイナーキーとして扱い、後半はCキーとして扱うようなアプローチも面白いと思います。

成立に必要な条件

セカンダリードミナントが成り立つには2つの条件があります。

まず1つ目は前述のダイアトニックコードの各コードへ解決することです。

2つ目は、ダイアトニックコードに向かうドミナントコードのルートが、ダイアトニックスケール(キーがCならCメジャースケール)上にある音であることです。

この2つを前提に1つ1つ見ていくと、F7 – BbやF#7 – Bdimは成り立たないことが分かります。前者はダイアトニックコードにBbがないこと、後者はルートのF#がCメジャースケール上にないためです。勘違いしやすいところですので、注意しましょう。

F#7 – Bdimはコード機能としても考えにくい

ちょっと脱線して難しい話になってしまいますが、そもそもF#7をドミナントとすること自体難しいと思います。Idim(Im7-5)となるロクリアンスケール上に出来るダイアトニックコードにはV7がないためです。

ロクリアンのダイアトニックコード

色んな意味でF#7 – Bdimがセカンダリードミナントとしては成り立たないことが分かります。

一覧表

セカンダリードミナントを一覧表にすると、以下になります。セカンダリードミナントと成り得るコードは5つになります。

解決先ダイアトニックコード Dm (IIm) Em (IIIm) F (IV) G (V) Am (VIm)
セカンダリードミナント A7 (VI7) B7 (VII7) C7 (I7) D7 (II7) E7 (III7)

ダブルドミナントについて

2回ドミナントが続くことをダブルドミナント、またはドッペルドミナントと呼びます。セカンダリードミナントのうちD7(II7)はG7(V7)に進行するため、Vをセブンスにする場合は必然的にダブルドミナントになります。そのためD7 – G7 -Cのコード進行はよく使われています。

それ以外にも例えばE7 – A7 – Dmなどといったコード進行もダブルドミナントとなります。ただし上記D7と違って2回元のキーにない音が含まれたコードが続くので、調性感がなくなりがちです。それを理解した上で使いましょう。

ドミナントからドミナントへ進行出来る理屈

ダブルドミナントはドミナントからドミナントへ進行しているため、どこかのキーから借りてきてるとは解釈出来ません。

しかしながら4度上(5度下)に進行する強進行と、本来トライトーンの内半音上がって解決する方の限定進行音(導音)を半音下げる方向で考えると、トライトーンが半音ずつ下がっていく特徴を持っており、自然に繋がります。このような半音ずつ上がったり下がったりを続ける進行をクリシェと言います。

ダブルドミナント