これまでコードを中心に解説してきました。この記事ではスケールにフォーカスを当てて、スケールとは何なのか、そして一般的な音楽の基本になる4つのスケールを解説します。

スケールとは

ずばり、スケールは音を低い順から並べたものです。これまでの記事でもドレミファソラシドはCメジャースケールと出てきましたが、音が並んでますよね。日本語で音階と言います。

もう少し詳しく説明すると、それぞれの音がどのくらい離れて並んでいるのかで何のスケールなのかが決定されます。

例えばCメジャースケールは、以下の画像のように「全・全・半・全・全・全・半」といった規則性を持って並んでいます。

Cメジャースケール

楽譜に調号がある理由

音楽理論の勉強をし始める前は、例えばCキーをDキーに転調させる場合、Dキーはレミファソラシドレと思ってしまう方もいるかもしれません。しかしこれは間違いでDキーはレミファ#ソラシド#になります。

これはなぜかと言うと、レミファ#ソラシド#は各音程が「全・全・半・全・全・全・半」となっているからです。レミファソラシドレの場合、「全・半・全・全・全・半・全」となります。ちなみに、ここでは深く解説しませんがこのレミファソラシドレはDドリアンスケールとなります。

つまり、Dキーが続く場合は常にファとドにシャープが付くことになります。だからCキー以外では調号を付けて、曲中で出てくる各音符に度々シャープやフラットを付けなくても良いように省略しているんですね。

スケールとコードは表裏一体

ダイアトニックコードの解説でも書きましたが、楽曲の基本となるダイアトニックコードはスケール上に出来ます。なのでスケールとコードは表裏一体と言えます。

複雑なテンションコードやスケールを勉強するようになると、その意味がより一層分かるようになると思います。音楽の理解を深めるには、スケールとコードの両方の視点から考える必要があります。

メジャースケール

前述のように「全・全・半・全・全・全・半」で構成されるスケールです。一般的な音楽の基本中の基本で、その他のスケールを覚えるにもメジャースケールを軸に比較して覚えると分かりやすいかもしれません。

Cメジャースケール

マイナースケール

「全・半・全・全・半・全・全」で構成されるスケールです。正確にはナチュラルマイナースケールと言い、日本語で自然的短音階と呼びます。

以前の記事でも何度かマイナースケールはドレミファソラシドをラシドレミファソラと並び替えたもの、と触れたことがありました。ラシドレミファソラがどのような音程関係で構成されているのか鍵盤で一つ一つ見てみると、「全・半・全・全・半・全・全」となっていることが分かると思います。

メジャースケールと比較すると、第3音が短3度になるため暗い感じになります。

Cマイナースケール

ハーモニックマイナースケール

「全・半・全・全・半・全+半・半」で構成されるスケールです。日本語で和声的短音階と呼びます。マイナースケールの第7音を半音上げたスケールで、第6音と第7音の間が1音半になっていることがこのスケールの特徴です。

トライトーンの解説でも触れましたが、導音と呼ばれる概念があります。この導音はスケール上の第7音になり、Cメジャースケールならシの音になります。

しかしマイナースケールの第7音はメジャースケールと比較するとフラットして半音下がっています。導音は半音上がって解決感が得られる性質のものです。つまりマイナースケールには導音がありません。このデメリットを補うために生まれた概念がハーモニックマイナースケールになります。

Cハーモニックマイナースケール

メロディックマイナースケール

「全・半・全・全・全・全・半」で構成されるスケールです。日本語で旋律的短音階と呼びます。

マイナースケールのデメリットを補うために生まれたハーモニックマイナースケールですが、1音半の広い音程差が滑らかさを損ない、少し唐突な感じを受けると思います。そのハーモニックマイナースケールのデメリットを補うために生まれたのがメロディックマイナースケールで、ハーモニックマイナースケールの第6音を上げたスケールです。メジャースケールの第3音を半音下げたスケールとも言えます。

メロディックマイナースケールは上行時はこのスケールを、下行時にはマイナースケールを使用するのが慣例となっています。

Cメロディックマイナースケール

下行時がマイナースケールになる理由

なぜ下行時はマイナースケールになってしまうのか疑問に思った方も多いと思います。これには導音の性質と先ほど挙げたメジャースケールと似ていることが関係しています。

マイナースケールに導音を持たせた結果ハーモニックマイナースケールが生まれました。そしてハーモニックマイナースケールの1音半の広い音程差をなくすためにメロディックマイナースケールが生まれました。しかし、その結果メジャースケールと似ていることになりました。

導音は半音上がって解決感が得られる性質のもので、これが欲しくて2つのスケールを導入した訳ですので、上行時は問題ありません。しかし下行時はメジャースケールと似ている特徴が邪魔をして、マイナーキーなのにメジャーのように感じるデメリットが生じました。そのため下行時はマイナースケールに戻す、といった使われ方をするようになりました。

各マイナースケールを解説してきましたが、どれもデメリットを解決して新たな概念が生まれてまた新たなデメリットが出てきて、といったような感じでイタチごっこのように見えますね。

ただこれは昔出来た概念で、既存概念の打破を繰り返して出来てきた今の音楽では、そこまで厳密に考える必要はありません。上記の経緯を知った上で、耳で判断してどうした方が良いか判断しましょう。